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「英語のリスニング・スピーキングに自信がない」
「英語をもっと聞けるようになりたい」
「英語を話したい」
そのような方のために、この記事では英語のリスニング&スピーキングに役立つ英語脳の作り方についてまとめています。
「英語脳」とは「英語で考える(Think in English)」こと

まず初めに、しばしば耳にする「英語脳」とは何のことなのか、明らかにしていきましょう。
英語脳とはズバリ「英語で考える」ことであり、英語では「Think in English」と表現されます1。
「英語で考える」ということは「英語を日本語に訳さない」「日本語を英語に訳さない」ということで、英語を流暢に操る1つの方法だと考えられています2。
「日本語脳」から「英語脳」を想像する
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「英語脳(英語で考える)」のイメージを掴むために最もわかりやすい例は、皆さんの「日本語脳」を思い浮かべてみることです。
「皆さんは日本語の音楽を聴く時、日本語の会話を聞く時、どうしていますか?」
おそらく、日本語の言葉をそのまま捉え、頭の中でその言葉、文章が持つイメージを広げていることでしょう。
具体例を挙げてみます。
「昨日、カレーライスを作ったんだけどさ、すごく美味しくできたんだ」
このような話を聞いた時、「昨日」「カレーライスを作った」「美味しい」というイメージを頭に思い浮かべるのではないでしょうか。
それに対して、例えば
「ほんと?!すごいね!どうやって作ったの?」とか
「いいね、カレーライス、僕も好きだよ」とか
「カレーライス、美味しそう!私も今日、食べよっかな」
みたいに会話が広がっていくわけです。
この時、言葉の意味をじっくり考えたり、当然、英語など他の言語に訳すことはしていないはずです。聞いた日本語に対してイメージを頭の中で作り、それに対して感じた思いを言葉にしているだけです。
ですから、英語脳(英語で考える)も同じで、
「英語を聞いてそのイメージを頭でつくり(英語のリスニングをして、英語で考える)」
「それに対して感じた思いを英語で表現する(英語で考えて、英語でスピーキングする)」
というのが英語脳(英語で考える)のエッセンスである、ということができるでしょう。
先の例で言えば、
「I cooked curry and rice yesterday! It was very tasty!」に対して、それを思い浮かべた上で、「Wow! Great! How did you cook it?」みたいになるわけです。
英語脳を作ることで得られる「6つのメリット」
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皆さんが日々、日本語脳で快適に日本語を聞き、話しているように、英語のリスニング・スピーキングをできるようになるには、英語脳を作ることが不可欠です。
それでは、英語脳を作るとどんなメリットがあるのか、見ていきましょう。
1.訳す「手間」が省ける
先ほど話したように、英語の表現から直接、頭の中にイメージを作り上げるので、当然、訳すことはなくなります。
そうすると、訳すというヒトテマを省略できるので「楽」になるわけです。
英語脳ではない場合と英語脳の場合にどう違うのか、具体的に考えてみましょう。
日本語脳の場合
- 英語を聞く
- 英語を日本語に訳す
- 日本語でイメージする
- イメージに対して日本語で考える
- 日本語を英語に訳す
- 英語を話す
英語脳の場合
- 英語を聞く
- 英語でイメージする
- 英語で考える
- 英語を話す
英語を聞いて話す(リスニング&スピーキング)を行う場合、日本語脳と英語脳で、このようなステップの違いがあることがわかります。
日本語脳の場合は6ステップ、対して英語脳の場合は4ステップです。
もちろん、英語脳を作り始めたばかりの時や、英語脳が作れていない言葉が現れた時はつまずく事もあると思いますが、作り続けていくと「訳さないことの楽さ」が分かってきます。
「行うことが減ると、これだけ楽なんだ」ということを身に沁みて感じることでしょう。
これは普段の仕事(作業が減れば減るほど楽になる)にも通じるところがあります。
ですので、焦らず慌てず少しずつでも英語脳を作っていくことが、長い目で見れば、英語力をグンと伸ばす近道になります。
2.リスニングで聞き逃しにくくなる

英語を聞いた後で、英語を「日本語に訳す」ことをしていると、その間に次の英語が始まっています。そうすると、その英語の音が聞けないことがあります。
先の例文の一部「I cooked curry and rice」を例にとって、考えてみましょう。
日本語に訳しながら、英語を聞くと、例えば
「I(私は)・・・curry and rice(カレーライスを)」となり、
「I」を「私は」と日本語に訳している間に次の「cooked」が始まり、「cooked」が聞こえないという状況が出てきます。
結果的に「私はカレーライスをなんだっけ?」のようなことになるわけです。
もちろん、英語の文章や英会話では、単文で終わらずに文章が続いていくわけですから、聞き逃す場所が増え、結局、「英語が聞こえない」「(相手が)何て言っているのか分からない」となってしまうのです。
英語脳によって「日本語に訳す」ことがなくなると、このような聞き逃しは起こりにくくなります。
例えば、「I cooked pot stickers!」と分からない英語が出てきても、聞き逃さなければ、
「Pot stickers? What’re they?」と返すことができるので、会話がつながるのです。
3.英語の言葉をイメージできる
英語脳(英語で考える)を作る作業は、英語と頭の中のイメージを結びつける作業です。これを繰り返すことで、英語の言葉のイメージが出来上がってきます。
例えば、皆さんは「英語の言葉が深く理解できる」と日本語で言われた場合、日本語脳を用いて文章の意味をなんとなくイメージしているはずです。
「美味しい」と言う言葉に対しても、
「晴れている」という言葉に対しても、
言葉の意味を深く考えることなく、イメージを作っているはずです。これが日本語脳ですが、英語脳はこのような感覚の英語版です。
英語の言葉から頭の中のイメージという「インプット」作業に慣れてきたら、そのイメージに対する感情や思いを英語の言葉にする「アウトプット」作業もしやすくなります。
前者の作業がリスニング、後者の作業がスピーキングということになりますので、英語脳はリスニングとイメージ、イメージとスピーキング双方に効果をもたらします。
4.英語の言葉を深く理解できる
英語脳(英語で考える)には日本語が登場しません。英語も英語で捉えることになります。
このメリットは、英語の言葉同士の関係性がわかることです。
buyとpuchaseという言葉を例に説明します。
日本語脳の場合
- buy:買う
- pruchase:購入する
英語脳の場合
- buy:to get something by paying money
- purchase:(formal)buy
日本語で説明されても、すぐにピンと来ないと思いますが、英語を英語で解釈することで、「purchaseはbuyのフォーマルバージョン」とシンプルに解釈できます。
より具体的には、
- 友人と話をする気楽な場では、buyを用いる
- ビジネスなどの場ではpurchaseを用いる
となるわけです。
英和・和英辞典を用いながら、日本語訳を意識し、日本語脳で考えていると、このような英語の言葉同士のシンプルな関係性を知ることはかなり難しいです。
一方で、英英辞典を用い、英語で考え、英語同士の関係性を捉えて英語脳を作ると、このようなシンプルな英語の言葉の関係が見えてくるのです。
このことは、日本語を聞き、話している時の感覚と同じように「英語を聞き、話す時に、その言葉に対する強い感覚を持ってコミュニケーションできるようになる」ことにつながります。
5.自分の思いを英語で伝えやすくなる
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- 英語の言葉と頭の中のイメージがつながり
- 英語の言葉同士の関係性が分かってくる
このことは、スピーキングにも大きな価値をもたらします。
頭の中のイメージと英語の言葉自体をうまく繋げることができれば、あとはそれを英語で表現すればいいだけです。
「頭の中のイメージ(感情や思い)を日本語にして、それを英語に変えて」ではなく、
「頭の中のイメージ(感情や思い)を英語に」となることで、
頭の中のイメージと英語がダイレクトに結びつきます。
結果的に、日本語脳の時のような日本語訳を考えながら、「本当にこの英語でいいのかな?」「この表現であってるかな?」というような不安も軽減し、自分の思いに沿った英語を伝えることができるようになります。
6.英語のリスニング・スピーキングに自信を持つことができる
これらからわかるように、日本語脳で日本語訳を考えながら英語に取り組んでいた時と比べて、英語脳(英語で考える)を作ることで、英語の「感覚」を養うことができ、「英語感覚」を持って、コミュニケーションできるようになるので、英語のリスニング・スピーキングに自信が持てるようになります。
これは、何も完璧に英語が出来るようになるということではなくて、たとえ完璧に聞き取れなくても、完璧に伝えられなくても、それを補い、次に生かせることができる、という意味です。
「英語脳の存在を知っている」
「英語脳の作り方を知っている」
ので、
聞き取れなくても、英語脳で聞いて、つなげることができる。
伝えられなくても、英語脳で考えて、もう一度、伝える試みができる。
これは、英語脳(英語で考える)によって、「頭の中のイメージ(感情や思い)と英語(言葉)をダイレクトにつなげる」方法を知っているからこそできることです。
日本語脳と違うのは、英語のリスニング・スピーキングのスピード感についていきやすくなるので、日本語脳の時の「また聞き取れなかった」「いつになったら英語が上達するのかな」という落ち込みや先の見えない不安よりも、英語脳を作るその過程も含めて、楽しく、面白く、前向きに英語に取り組むことができるようになります。
英語脳を作る前に必要な「7つの心構え」
ここまでまとめてきた内容から感じられた方もいるかもしれませんが、日本の小中高で英語教育を受けてきた人のほとんどは「日本語脳で英語に取り組む」習慣が身についています。
ですから、英語脳(英語で考える)を作る前にまず日本語脳で取り組む習慣を「意図的に」直す必要があるのです。
これはつまり、これまで蓄積してきた「日本語脳での英語」を取り壊す作業とも言えますので、後で述べるように、いくつか弊害があることも確かです。
ですが、長期的に(年単位で)見れば、皆さんの英語力には大きな力になります。
それでは、日本語脳で取り組む習慣を「意図的に」直すために必要なことを見ていきましょう。
1.英語を日本語に訳さず、日本語を英語に訳さない
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日本語脳で英語に取り組む時の中心は、「英語を日本語に訳す」あるいは「日本語を英語に訳す」という作業です。
この作業は、日本語脳で取り組む、英語のリスニング(聞く)・スピーキング(話す)・リーディング(読む)・ライティング(書く)全てにおいて、浸透しているのではないでしょうか。
普段の日本語の会話に英語が存在しない(カタカナ英語は除いて)のと同じように、英語脳(英語で考える)において、日本語は存在しません。もちろん、他言語においても同様で、例えば、スペイン語を母国語としている人が英語脳を作る場合にも、そこにスペイン語は存在しなくなります。
ですから、英語脳を作る際には、皆さんの脳に浸透している「英語から日本語」「日本語から英語」の回路を断ち切ることが、欠かせません。
これは「意図的に」行う必要があります。
なぜなら、「英語から日本語」「日本語から英語」という作業が、これまでの小中高という長い年月をかけて、体に染み込んでいる(脳がその作業に慣れており、脳内にその回路が形成されている)からです。
「意図的に」行わないと、いざ、英語脳(英語で考える)を作る時に、無意識に「英語から日本語」「日本語から英語」を脳が行ってしまい、英語脳を作る妨げとなってしまいます。
まずはこの「英語を日本語に訳し、日本語を英語に訳すことをやめる」ことを「意図的に」行う必要がある、ということを認識しましょう。
2.日本語脳を用いる問題集・テキストを使わない
英語を日本語に訳さず、日本語を英語に訳さないためには、そのような状況をなるべく作らないことが大切です。
「身の回りを英語環境にする(英語圏に住むetc)」
「身近なことを英語で考えるようにして1日過ごす」
ことができれば理想的なのでしょうが、現実的にはムズカシイ人がほとんどではないでしょうか。
まずは自分が1日の中で英語学習に使っている時間から変えていくことが得策です。
どう言うことかと言うと「英語を日本語に訳さず、日本語を英語に訳さない英語学習をする」ということ。
例を挙げると
- 英文を日本語の文章に訳する、あるいは日本語を英訳する問題集・テキスト
- 英単語を日本語で覚える問題集・テキスト
など、英語を日本語に、日本語を英語に対応させるようなものを用いないことです。
これらは「英語を日本語訳に照らし合わせる」「英文を日本語の文章に訳する」あるいは「日本語の文章を英文に訳する」ことで、日本語脳による英語学習を行っていることになります。
この作業を行っている限り、英語脳(英語で考える)は作ることはできません。
例えば、今持っている問題集・テキストがそのようなもので、捨てるのが勿体無いということであれば、なるべく日本語訳を見ないで英語だけを見て学習することをオススメします。
一点、注意したいのが、「日本語脳を用いる問題集・テキストを使わない」ということは、必ずしも「英語だけで書かれた問題集・テキストを用いる」ということではないということです。もちろん、その方が英語脳は作れますが、英語脳が作れていない段階でそのようなものを用いると、逆に負担になりかねません。
英語脳を作る過程でよくわからくなったら、一度、日本語に戻ってイメージを作る、という作業が有効になる場合もありますので、とにかく「英語を日本語に訳す」「日本語を英語に訳す」という作業を行わない、ということにフォーカスして、自分に合った問題集・テキストを選ぶようにしましょう。
3.英和・和英辞典を用いない
英和・和英辞典を用いると、英語を日本語に訳し、日本語を英語に訳してしまいます。ですから、英語の意味を調べる時は、英和・和英辞典を用いるのではなく、できるだけ英英辞典を用いるようにしましょう。
英英辞典を用いることで英語を日本語に、日本語を英語にではなく、「英語を英語で」の回路が脳に作られていきます。
ですから、英英辞典を用いることが、英語脳を作るトレーニングでもあるのです。
幸いなことに、今はインターネット上にある多くの英英辞典を無料で活用することができます。
気になる英単語があれば、それをインターネットの英英辞典を用いて確かめる習慣をつけるようにするとよいでしょう。
例えば、
- Cambridge Dictionary(https://dictionary.cambridge.org/)
- Collins English Dictionary(https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english)
- Oxford English Dictionary(https://www.oed.com/)
- Merriam-Webster(https://www.merriam-webster.com/)
などがあります。それぞれ特徴が異なりますので、実際に使ってみて、自分に合うものを選ぶといいでしょう。もちろん、複数の辞書を使う事も選択肢です。
4.5文型を意識しない
皆さんの中に、英語を考える時に「文型」を意識している方はいるでしょうか。
小中高で培ってきた日本語脳での英語学習では、特にリーディング(読む)・ライティング(書く)において、「基本5文型」の意識を強く持っている方もいるでしょう。
実は、これも英語脳(英語で考える)を作る上では、大きな足枷となります。
その理由は、基本5文型を意識しすぎてしまうと、それに当てはまらない英語表現が来た時に、対応しきれなくなってしまうからです。
リーディング(読む)・ライティング(書く)は、考える時間的猶予があるのでまだいいのですが、ことリスニング(聞く)・スピーキング(話す)になってくると、こちらが考えるのを待ってはくれません。
もちろん、英語には基本的な文の構造がありますが、その中で意識するのは
「(S)V(・・・)」
だけです。後はそれぞれの英語表現・英単語に特徴的なパターンを意識すればよいのです。
5文型以外の文章もあるということを今一度、認識して、5文型という意識を捨てることが、英語脳(英語で考える)を作る1つのポイントになります。
5.「正解は1つ」ではない
日本語脳を用いる問題集・テキストには、いわゆる「正答」が記されていることでしょう。
そして、その正答と皆さんが考えた解答が少しでも違うと、自分は
「正しくない」「間違ってしまった」
と感じるのではないでしょうか。
実はこの意識は、英語を学ぶ上で大きな阻害因子となります。
日本語脳を用いる英語教育を小中高で受けている人や日本語脳を用いる問題集・テキストを長年使っている人では、無意識のうちに、そのような「正解は1つ」のような潜在意識が身についている可能性があります。
この「正解は1つ」と言うのは、決して正しくありません。
試しに、皆さんが気になる英単語を、複数の英英辞典で確かめてみてください。
すると、「その英単語を、すべての辞書が一言一句、同じ表現で説明していることは決してない」ことが分かるでしょう。当然、同じ英単語ですので、基本的には同じ意味合いですが、説明の方法は複数あると言う事です。
このことから、「正解は1つ」ではなく、「あることを英語で表現する方法は複数あって、当然」と認識することが、英語を学習する上ではとても大切です。
皆さんが、日本語でコミュニケーションをしている時、知人・友人と同じ内容を言う場合に別な表現を使って伝えているように、
「この辞書にはこう書いてあるけど、私はこう説明しよう」
「あの人はこう表現しているけど、私は別な表現をしよう」
と考えて問題ないのです。
このような日本語脳での英語学習で、潜在的に染みついた「正解は1つ」という意識を取り払うことも、英語脳(英語で考える)を作ることを促進します。
6.「一語一句完璧に」と思わない
「完璧に聞き取れなかった」
「ペラペラ英語が話せない」
英語リスニング・スピーキングにおいて、このような意識をもったことはありませんか?
英語の聞き取り問題や英作文など、英語学習をしているうちに知らず知らずのうちに一語一句への意識が強くなり過ぎることがあります。これは1つ前の「正解は1つ」という意識と似ています。
この「一語一句への意識」を持ちすぎないことは英語リスニング・スピーキングにおいてとても大切です。
実は、言葉を聞く・話す時の「求めすぎない」姿勢は、私たちが普段、日本語で会話をしている際に、無意識のうちに実践していることです。
皆さんは、普段、日本語で会話をしている時に、会話自体に完璧を求めていますか?
聞く時も「聞こえなかったら、わからなかったら、聞き返す」ことをしていると思いますし、話す時も「すぐ言葉が出てこなかったら考えながらゆっくり話す」「言い間違ったら言い直す」ことをしているのではないでしょうか。
聞く時も話す時も「一語一句間違えずに」ということよりも、相手の言いたいことは何かを考えながら聞いて、どんなことを伝えたいかを考えながら話をしていると思います。
英語も同じ感覚で、一語一句への意識ではなく、「相手の言いたいことは何か」「自分が伝えたいことは何か」を第一に考えながら、リスニング・スピーキングのトレーニングをすることが大切です。
日本語脳をもつ私たちが、日本語の会話でも一語一句を完璧にとは思っていないのに、母国語ではない英語で、ましてやこれまで小中高での日本語脳教育を受けてきたという、英語脳を作るにはおよそ不利な状況があるのに、一語一句完璧にすることは至難の業です。
もちろん、常に高みを目指す、もっとよくなることを目指す、その姿勢は重要です。
ですが、あまり求めすぎてしまうと、完璧かどうかだけが気になってしまい、英語自体を嫌いになってしまう可能性も否定できません。
ですから、求めすぎることなく、間違ったらダメと考えることなく、一語一句よりも要点を捉えることに重きをおく意識をもつようにしましょう。
もちろん、日本語の読み書きの時も見返したり確認したりして精度を高めているように、英語のリーディング・ライティングの時は、リスニング・スピーキングの時よりも時間的猶予がありますし、正確さが求められます。
英語リスニング・スピーキングと英語リーディング・ライティングとは別物と考え、完璧を求めず、気を楽にして取り組む事も、英語脳を作る上でとても大切な要素になります。
そして、間違ったところはどうやって向上させていくかを考えながら、楽しく自分のペースで続けるように心がけることが英語を楽しく長く学ぶ秘訣です。
7.リスニング・スピーキングは、リーディング・ライティングとは「別物」
先にも述べているように、リスニング(聞く)・スピーキング(話す)とリーディング(読む)・ライティング(書く)は別物です。
それぞれの特徴を比べてみると、違いが一目瞭然になります。
リスニング・スピーキング
- 主に「聴覚」を使う
- 「時間」がない(瞬発力が必要)
- 「確認」ができない
リーディング・ライティング
- 主に「視覚」を使う
- 「時間」がある(瞬発力は必須ではない)
- 「確認」ができる
私たちは、視覚と聴覚を通じて外界から多くの情報を得ていますが、リーディング・ライティングは主に視覚を、リスニング・スピーキングは主に聴覚を活用しています。
視覚と聴覚は別物であり、視覚をトレーニングしても聴覚が鍛えられるということはありませんので、リーディング・ライティングをいくらトレーニングしても、リスニング・スピーキングがグングン上達するということはないのです。
しばしば、「英語のリーディング・ライティングはある程度できるけど、リスニング・スピーキングはニガテ」という話を聞きますが、その原因の1つが、ここにあります。
ですから、英語のリスニング・スピーキング力を向上させるには、視覚によるトレーニングではなく、聴覚によるトレーニング、つまり、英語の文字を見ないで行うトレーニングが必要になります。
皆さんも実感していると思うのですが、リーディング・ライティングは、リスニング・スピーキングと比べて圧倒的に「時間」があります。
例えば、リーディングで文章の意味がわからなかったら、何度も戻って「確認」することができます。ライティングも書いた後で全体を「確認」することができます。ですから、英語を日本語に訳す、あるいは日本語を英語に訳す日本語脳でも対応できるのです。また、英語の文字を目で確実に捉えることができるので、「英単語を読み間違う」ことは多くないでしょう。
一方で、リスニング・スピーキングは戻って「確認」することができません。さらに、英語の文字を目で確実に捉えることもできないので、「英単語を聞き間違う」ことも起こり得ます。このように、リスニング・スピーキングは、リーディング・ライティングと比べて「時間」がなく、「瞬発力と正確性」が必要になります。
英語脳を作り、英語のリスニング・スピーキング力を高める学習をしていると、「瞬発力と正確性」も高めることができるのです。
日本の英語教育でリーディング・ライティングを中心とした教育を受けてきた人は、知らず知らずのうちに、英語において視覚情報に慣れが生じていて、「瞬発力と正確性」のトレーニングが積めていない場合がありますので、リーディング・ライティングとリスニング・スピーキングは別物として意識してトレーニングすることが大切です。
英語脳を作る時の注意点
1.「英語から日本語」「日本語から英語」の能力が低下する
英語脳(英語で考える)ためには、「英語を日本語に訳さず、日本語を英語に訳さない」必要があります。
したがって、「英語を日本語に訳し、日本語を英語に訳す」能力は低下します。
英語を日本語に訳しながら、あるいは日本語を英語に訳しながら英語学習をしていた方は、「英語がわからない」「英語ができない」という感覚に、一時的に陥るかと思います。
ですが、これは英語脳を作る時に限らず、物事はしなければその技術や能力は落ちてくるというごく自然な経過です。
英語脳になればなるほどこの感覚は薄れてきますので、それを楽しみに続けていきましょう。
もし、英語に関して「英語を日本語に訳し、日本語を英語に訳す」方が「英語脳(英語で考える)を作る」より優先順位が高いのであれば、「英語を日本語に訳し、日本語を英語に訳す」能力は低下するということをよく考える必要があります。
もちろん、「英語のリスニング・スピーキングのスキルを高める」そのために「英語脳(英語で考える)を作る」ことの方が優先順位が高いのであれば、この注意点を念頭においた上で、「英語脳(英語で考える)を作る」ことを始めることをオススメします。
2.(日本語脳を使う)テストの成績が落ちる可能性がある
「英語から日本語」「日本語から英語」の能力が低下するということは、具体的な影響を考えると、「英語から日本語」「日本語から英語」という技術を必要とするテストの成績は下がる可能性があるということです。例えば、
- 英文を日本語に訳す問題(英文和訳)
- 日本語をもとに、英作文を作る問題(和文英訳)
など、日本語が出てくる英語問題です。
ですから、このような「英語から日本語」「日本語から英語」のテストでいい点数を取りたい、「英語から日本語」「日本語から英語」の能力を高めたい人には、英語脳(英語で考える)を作ることは適切ではないかもしれません。
英語脳(英語で考える)を作る際には、日本語が出てくる英語問題のテストの点数は少し下がって当然、という心構えでいるようにしましょう。
英語脳の作り方
それでは、最後に英語の作り方についてまとめます。
これまで述べてきたように、英語脳とは「英語で考える」ことです。
私たちが普段、日本語脳で過ごしているような感覚を、英語で身につけるトレーニングをすればよいということになります。
もちろん、日本語と比べて圧倒的に触れる時間が少ないため、日本語脳と同じくらいまで高められるかはムズカシイところですが、できるだけ効率的効果的に英語脳を作っていきましょう。
「英語脳を作る前に必要な『6つの心構え』」で示しているように、
- 英語を日本語に、日本語を英語に対応させるような問題集・テキストを用いない
- 英英辞典を用いる
ことがトレーニングツールの主体となります。
英語脳リスニング:英語とイメージを結びつける
「日本語を聞いて、その言葉のイメージを浮かべることができる」
ように、
「英語を聞いて、その言葉、表現のイメージが浮かぶ」
ことが、英語脳のリスニングポイントです。
英語リスニングにはいくつかポイントがあり、そのそれぞれに対してトレーニングをすることで、英語脳を作ることができます。
リスニングにおけるポイントは以下の記事にまとめていますので、自分の課題と感じる部分を中心に取り組んでみましょう。
英語脳スピーキング:イメージと英語を結びつける
リスニングとは逆で、「言いたいことのイメージを日本語にする」日本語脳のように、
「言いたいことのイメージを英語で解釈し、表現する」
ことが、英語脳のスピーキングポイントになります。
英語スピーキングにもいくつかポイントがあり、そのそれぞれに対してトレーニングをすることで、英語脳を作ることができます。
参考情報
- Dong YR. Learning to Think in English. https://www.researchgate.net/publication/234742422. ↩︎
- Setia Wati W, Zuhri Dj M, Hasanah U. Thinking in English as a strategy for creating better performance for the students’ critical speaking skills. 2023 https://ejournal.uin-malang.ac.id/index.php/jetle/index. ↩︎